高等学校体育連盟とは

文部科学省平成9年の資料だけれども、運動部の参加率は、中学校で74%、高等学校で49%。日本国民の3/4は運動部活動の経験を持つ。運動部の活動は日本の教育に大きな影響力を持っている。体育の部活動には必ず競技大会がある。府県レベル、地方レベル、全国大会。これらを誰が運営しているか、あまり気にとめる方はいないのではないかと思う。運動部の公式競技を運営しているのは、中学校体育連盟、高等学校体育連盟で、文部科学省でも教育委員会でもない。全国高等学校体育連盟は、財団法人であり各都道府県高等学校体育連盟により構成されている。更に、関東、東北、・・といったブロックごとの高体連がある。各都道府県体育連盟は高等学校の参加によって構成されている。切り口を変えると、全国高体連は、各競技毎の専門部に分かれ各都道府県高体連も専門部に分かれる。各専門部は、その部活動を行っている各高校の参加で構成されている。この専門部の役員は、部活動顧問の中から選ばれる。この人達が高体連専門部を運営している。もちろん総会があって、参加校全体の承認の下で動くのだが総会で細かな議論などしていられない。運営は、基本的に役員に委ねられているといってよいだろう。各都道府県単位の専門部の代表が地方ブロックの高体連専門部、全国高体連の専門部役員を構成する。
 役員の仕事は大変だ。年間の競技日程を決め、競技場を確保し、案内を各学校に送り、競技によっては組み合わせ抽選を行い、競技会の当日は、選手が集まる前から競技場の設営をし、競技運営をし、後片付け。その他、競技に関する顧問の勉強会や、選手に対する講習会、非公式強化試合を組んだり。年に一回は総会を開き、総会報告をする。これらの仕事を、基本的にボランティアでこなす。部活動顧問は日本の教育では管理職が命令することができない。教員の自主性に委ねられた活動だから。
 各競技の運営にはその競技に関するかなりの専門的知識が必要である。少なくとも役員の大半は、その競技内容を熟知していなくてはならい。従って高体連の役員は、学校の先生であり、同時に自分自身がその競技の経験者で構成されることになる。時には、何の経験もなく顧問を始めてそこで知識を身につけた人もいるが。そして、役員の仕事は大変だから、その競技に強い関心熱意、責任感を持たなければ役員は務まらない。結果として、その競技に自分自身がかなり強い関心を持つ先生、過去に選手としてかなりの実績を持つ先生が多く役員を受け持ち、運営を主導することになる。
 全部の競技について調べたわけでも、全ての都道府県について調べてみたわけでもない。私の顧問経験、同僚教員の顧問経験からの推定に過ぎないけれど。
これは同時に、強く実績ある学校の顧問が役員に集まる傾向がある事を意味する。部活動に熱意を持って取り組み実績をあげたいと願う顧問にとって、高体連役員はある意味でおいしい仕事だ。高体連の役員会は、強い学校同志の情報交換の場であり、容易にその競技の最新技術や最新コーチング技法に触れることができる。強化試合も組みやすい。こうして部活動にそもそも熱心な顧問が集まって高体連役員を構成し、運営が行われる。
これら役員の関心事が、自分の担当する競技に集中するのは当然のことである。自分の属する学校がよい成績を上げる。自分の属する都道府県がよい成績を上げる。自分の属する競技が優秀な選手を排出し、世界大会でよい成績を上げる。自分の属する競技が競技人口を増やして盛んになり選手層を厚くする。高体連役員はそのために活動する。競技会はたくさんあった方がいいし、研修会、強化合宿もたくさんあった方がいい。学校教育における「健全」な部活動の在り方といった視点を優先することはできない。そのような「甘い」こと考えていては他府県に勝てない。その競技を強くするという目的だけからでは、この流れを止めることはできない。
 新興宗教教団のような雰囲気を持つ、といったら悪口の言い過ぎだろうか。しかし、どの競技でもそうだけれども、日本全体で、それぞれの競技が独特の社会を構成し「教団」のような空気を作り出しているのは確かだ。中、高、大、社会人の競技団体の幹部は互いをよく知っている。その上、用具メーカーなども微妙に絡んで独特の社会を作り上げている。その集団の目的は、世界大会で実績上げること。その競技が盛んになること。これ以外ない。
 これらの先生方は、教員として働きながら、同時に自校の部活動顧問であり恐らく休日返上で生徒の練習を指導し、都道府県高体連役員として競技会他の運営にあたる。たいてい強い学校だから、指導チームは都道府県レベルの試合で結果を出し、地方ブロック大会に出場し、うまく行けば全国大会の引率指導もする。殆ど私生活をなげうって、活動されているはずだ。
 部活動過熱の一要因として、体育部運営システムとしての高体連が深く関与していることを申し上げたかったわけです。ちなみに、全て中体連と読み替えていただいても同じ事が成り立ちます。中学の方が事態は深刻かもしれない。
 高体連は、学校部活動の微妙な位置づけから生み出されたもので、学校部活動を制度の根本から見直さなければ、高体連組織も変わることができない。
 この狭間で、学校教員は自主活動としての顧問を「強制」され、労働基準法限度を遥かに超えた労働を強いられる。

提案
 中学高校部活動の全国大会を禁止する。
  高体連は、インターハイを含む全ての全国大会をやめる
  中体連は、全中をやめる
  国体への高校部活動の参加を認めない。
 中学高校生の放課後体育活動の場(社会体育)を、学校部活動とは別に作る
  一定の基準を満たせば、行政の設置、私立学校の設置、一般企業の設置、いずれも可
  指導者は正式雇用し、参加生徒の行動全てに管理責任を負う
全国大会参加は、社会体育所属者のみ認める

無理だろうなあ。でも中学校の野球にはこの兆しがある。